深く読みこなす

ハーネマンの著Organonは、
一つ一つ正しく深く解釈していくと
面白い記述が多くあります。

しかしながら、
これらを正しく深く読みこなす人は
非常に少ないように思います。

それは
この書は、
この書だけでは理解出来ないからです。


オルガノンを読みこなすためには
ハーネマンの思想の背景を知ることが必要です。



サンキャ哲学


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インドのサンキャ哲学は、
物質と生命の創造原理を説いた自然哲学です。


アーユルヴェーダの概念の元になった哲学の一つです。

アーユルヴェーダでは
主に6つの哲学が利用されていますが、
特に
このサンキャとヴァイシェーシカは
最も多く採用されたようです。

紀元前の聖カピラが創始者と伝えられていますが、
師の原典は残っていないために、
後世の人たちが改訂していったものだけが現存します。

いくつもの記録がありますが、
クリシュナが著した「サンキャ・カリカ」は、
古書店でも購入できる他に
インターネット上でも公開されています。

これらの哲学は、
紀元前のヴェーダ時代に真我に目覚めていたリシ聖賢)たちが、
深い瞑想状態の中で、
高次から受け取った宇宙意識の叡智を
地上に伝えたものです。

それを
代々口伝されてきた教えが、
後世にヴェーダ聖典として残されてきたもので、
普遍意識からの情報は
何千年経っても色あせることはありません。

 

 

サンキャ哲学とカント

Sankhya Karika」は
インドの哲学や文学、宗教のみならず、
西洋文化にも大きな影響を与えた哲学です。

特に
ドイツ哲学は
大きく影響を受けており、
イマヌエル・カントやシェリングもその一人でした。

カントは、
直接サンスクリット語で読んだのではなく、
リトアニア語訳の文献を入手しています。

彼は
「ここには哲学だけでなく、すべての謎を解く鍵がある。」
と述べています。

ハーネマンの考える生命感には、
サンキャ哲学の流れが見えますので、
カントやシェリングからの影響ではないかと私は考えます。

カントが
自著の中でOrganonについて述べていますので、
ハーネマンのOrganonにも少なからず影響があったものと思われます。

ちなみに、
シェリングは物質を分解していくと最終的に不可視の精妙なエネルギー体となるために、
無限に近く分解可能であると主張しています。

ハーネマンは、
希釈を試みたときに、
このシェリングの説を拠り所にしていたのかもしれません。


 

ヨハン・ハインリッヒ・ランベルト


さらに
ハーネマンは、
カントやシェリングの他に
同じくドイツの数学者・物理学者・化学者・天文学者であったヨハン・ハインリッヒ・ランベルトにも影響を受けています。

ランベルトは
円周率が無理数であることを証明したり、
メルカトル図法など現在の数学でもおなじみの人ですが、
銀河系に関する研究や物理化学分野にも幅広く活躍していたので、
同じく視野の広いハーネマンが影響を受けたのは当然のように思えます。

ランベルトは
科学分野と哲学を統合した面もあり、
1764年の著書「Neues Organon」の中でも
客観的視点と主観的視点の違いなどを述べていますが、
これも
彼の研究の一つである光学に関連づけています。

ハーネマンも
医学と哲学を統合しようとした点でかなり同調したのではないかと思われます。

また、
ランベルト同様、
ハーネマンは古代ギリシャのアリストテレスも哲学と医学、自然科学をまとめ、
彼の死後にまとめられた論理学「Organon
にも影響を受けたのではないかといわれています。


 

ハーネマンとサンキャ哲学

ハーネマンのOrganonに述べられている哲学的な思想は、
このサンキャ哲学の内容に非常によく似ています。

彼が語る
Wesen
Geist

Seel

Leib
Sinn

Gemut

といった考え方は、
このサンキャ哲学に源流があると思います。

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サンキャでは、
宇宙を構成する25の要素のうちで5つの高次エネルギー、5つの感覚、5つの運動エネルギー、5つの微細物質、5つの粗大物質に分けています。

最初の5つは、

プルシャ 純粋理性

プラクリティ 根源物質知性

マハト 宇宙知性

アハンカーラ 個別知性

マナス精神・意志・心

です。

また
アーユルヴェーダの物質の創造に関わる重要なトリグナと呼ばれる万物創造に関わるエネルギーの概念は
サンキャに由来するものであり、
それはサットヴァ、ラジャス、タマスの3つです。

ここではその詳しい説明は省きますが、
ご興味ある方は是非成書をご参照ください。

サンキャは
たいへん難しい高度な体系ですが、
さらに見えていくとハーネマンが影響を受けたであろう部分が出てきます。

サンキャは、
サンキャ哲学マニアだったカントを通して
ハーネマンに大きな影響を与えたといえます。



余談ですが、
ホメオパシーと同じ「類似のもので類似のものを治す」と述べたヒポクラテスは、
若い頃に東洋に留学し、
インドの科学に大きな影響を受けたとされており、
彼の「四体液説」は、
インドのトリドーシャ理論を彼独自に改編させたものであったともいわれています。

いずれにしても
時を越えた古来からのリシ(聖賢)たちの言葉が
陰から支えている様子が伺われます。




文責:森井啓二



引用

臨床家のためのホメオパシーノート 基礎編 (Nanaブックス)
森井 啓二
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
2010-09-18